セラミックの被せ物ができるまで その2

2. ポーセレンの原型ができるまで

まず、この埋没材をどのように作るのか? 液体ですから、粉(埋没材粉末)と液(今回は水)を混ぜれば、出来上がります。液と粉を混ぜるためには、混水比といって、粉何グラムに液何mlと決められています。

埋没材粉末を必要なグラム数計り、水も計量カップで計ります。しかし、水も、夏と冬では温度が違います。いつも一定温度を使う必要があるので、このために冷蔵庫に専用の水を保管しているのです。

ここまでこだわって、粉末と水を混ぜていきます。
混ぜる際にも注意が必要です。粉と液を混ぜると、中に気泡が生じます。気泡があると、精度が落ちてしまうのです。そこで、気泡を生じないように、液と粉を混ぜる必要があります。

真空埋没機 そんなことが出来るのか?
普通の大気圧の中では困難です。なぜなら空気があるからです。
じゃ、どうすればいいのか。空気がなければ、当然気泡も入りません。

ここで使うのが、真空埋没器(しんくうまいぼつき)です。
容器の中に、ワックスでできた歯の型を入れて、そこへ真空埋没器で作った埋没材を流し込みます。ドイツ製・アマンギルバッハ社のSmartmix X2 という機械です。

オールセラミックポーセレン(e-maxポーセレン) これで、埋没材が固まるのを待ちます。埋没材が固まったら、これを装置にセットします。すると、中で、ワックスが中で溶けてできた空洞へポーセレンの元となるものが出来上がります。


これは硬い材質です。今度はこれを実体顕微鏡で見ながら、先ほどのワックスアップと同じように細心の注意を払いながら、削りだしていくのです。
細かなところは高い集中力が必要です。息を止めて削る場所もあります。削りすぎれば、最初からです。

精神的なプレッシャーがかかります。

我々の歯科治療もそうですが、歯科技工士さんも目には見えない精神的なプレッシャーは、相当なものだと思います。

見ているだけだと、簡単そうに行っていますが、実際は心拍数や血圧も上がるなか、強い精神力に打ち勝っているのです。

そのような苦労をして削りだした歯の元に、今度は陶材(ポーセレン)を盛っていくのです。

テレビなどで、陶芸家が夜も寝ないで、大きな窯の前で、火の番をして焼き上げる、あの場面と同じことを行っています。幸い、歯科の場合は、焼成する器械があります。それは窯が小さいからです。やっていることは同じことをやっています。


石膏模型に歯の元を戻して、そこへ陶材を盛っていきます。焼くと色が変わりますから、それを見越して色を付けていきます。


陶芸家と違うところは、個人の歯の色に合わせて作ること。また形態も隣接する歯にぴったりと接するように作ることです。


形や色・大きさがミクロン単位で要求されるのです。また、色を出すため、3回くらい焼いては刷毛で塗り、また焼く工程を繰り返していきます。